生しらす食べたくねぇ?

江ノ島にて

最近、週末の恒例になりつつあるテニス特訓を終えて、ビールを飲みながら帰宅すると言う贅沢な時間を過ごしつつ、俺ととみーの間で会話が弾む…。

『仕事が忙しいはずだったけど、明日も休みなんだよなぁ』
『でも、いまから鈴鹿にFN見に行く余裕も無いしなぁ』
とみー
『俺も明日休みだなぁ、どっか行く?』
『そしたら、美味いもん食いてぇな』
とみー
『んじゃ、そばとかどう?』
『熱いし、冷えたやつをずるずるっとね』
『なかなか良いね。とりあえず、候補その1だな』
とみー
『しらすは?』
『生のやつ美味いらしいよ』
『生しらすなんて食ったことねぇぞ!?』
『こりゃぁ、行くしかねぇだろ!』

そんな適当な約束を交わし、お互いに帰宅した。適当な約束などすっかり忘れ、晩飯を食い、テレビを見て、シャワーを浴びた。ブログの編集でもしておこうと思い、パソコンをつける。

『(ん、そういえばしらすがどうのって言ってたな?)』
『(ちっと調べてみるか)』
『(めっちゃ美味そうじゃん!行くしかねぇ(本日2回目))』

そして、すぐにとみーの携帯にメールを送り、メッセンジャーでのやり取りを始めた。

『生しらすってどこで食えるの?』
とみー
『静岡とか、神奈川とかかな』
『とりあえず、ググってみるべし』
『江ノ島に食えるところあるぞ!近いし、いいんじゃねぇ?』
『とびっちょって言うらしい』
とみー
『ほほう。ここでいいんじゃない?』
『でもさぁ、なんか普通じゃねぇ?』
とみー
『ん~、たしかにねぇ…』
『ちょっと待て、面白いページあるぞ!』
『なんか俺らと同じこと考えてる人がいるらしい・・・。』
とみー
『行くしかないねぇ~!』
『それなら、この写真だけをもとに現地を探すって感じでどうだ?』
とみー
『おk。たのしそー』

適当な約束が、適当な計画になり…。

『日曜日の江ノ島って、超混むだろ…』
とみー
『考えたくない…』
『んじゃ、明日6時に迎えに行くから用意しとけよ』
とみー
『おk』

そして翌朝、少し寝坊した俺はあわてて支度を済ませ、とみーに電話する。

とみー携帯
『ぷるるるる、ぷるるるる、ぷるるるる、ぷるるるる、ぷるるるる』
『ただいま、電話に出ることが…』
『へっ』

江ノ島弁天橋

とみーの目覚めを待ち、朝7時についに出発した。適当な約束が、適当な計画になり、適当な行動で始まった。ガソリンが高いので、往復に必要だと思われる量を適当に給油する。ただし、ケチケチ精神で地域最安の店は外さない。ここは正確。

途中、江ノ島駅前で祭りがあるようで、人と車と路面を走る電車に挟まれた。

『車道で電車にであったぁ(ウルルン滞在記風)』的な状況だったが、俺は平然と車を進める。とみーは隣で平然と写真を撮る。素晴らしいチームワークが発揮されていた。

そして迷うことなく海に到達し、適当な駐車場を見つけて車を止める。少し興奮気味のとみーをよそに、飯を食うためだけに海に来てしまったことを後悔する俺。

『(こんなに良い天気なのに、海パンも持たず男二人で江ノ島だよ…)』
『(まぁ、いいさ)』
『(とりあえず、食おう)』

まだ午前中だというのに、気温は30度を軽く越えていた。日陰に立っているだけでも汗が出るのに、代謝の良い俺は汗だく。

『(あぁ、海が…)』

陸と島を結ぶ大橋をわたり、江ノ島へ踏み入れると…。

江ノ島のお祭り

『人が多すぎねぇ?』
とみー
『なんか、人多いね。なんかやってんのかな』
『あ、御輿だ』
『祭りやってんじゃねぇか?』
とみー
『お~、適当なスケジューリングにしちゃ上出来』

神社から降りてくる御輿を眺め、祭りがひと段落したところでいよいよ行動を起こす。

『んじゃ飯食うか!』
とみー
『店どこだっけ…』
『山のほうだから、あっちじゃねぇ?』
とみー
『いやこっちじゃないの?』
『まぁ、とりあえずレーサーの舵取りを信じろって』
とみー心
『おk。(どうせ適当なくせに…とりあえず、ついてこ…)』

歩く。

歩く。

ない。店が無い。行っても戻っても、細い路地と階段ばかり…。

とみー
『さ、とりあえず島の入り口まで戻ろう…』
『あぁ、こっちだ』
とみー
『…』

ゑじま

俺の舵取りはかなり間違っているようなので、スタート地点に戻って今度は富の舵取りに身を任せることにする。

とみー
『こっち』
『(『あちぃ…』)』
とみー
『こっち』
『(なんかソレっぽいんですけど…?)』

一本の細い路地を通り過ぎようとしてるときに、気がついた。

『さすが俺、見つけたぞ』
とみー
『…』
『やっぱり俺が見つけることになってる運命なんだな』
とみー
『…』

そして、はやる心を落ち着かせながら歩きにくい路地を進み、目的の『ゑじま』とご対め…。

ゑじま、お休み…

とみー
『お~い、ちょっとこれ見てよ~』
『えー、なになに…』

まぁ、適当に計画したわけで、適当に着ちゃったわけで、お店の休業日なんて見てないのは当たり前。

『さ、他の店探そう』
とみー
『そういえばさっき、魚屋みたいの通ったからそっちは?』
『Go!!』

同じ路地を3往復はしただろうか。そこに『いのうえ』はあった。見るからに普通の観光客は入ってこないであろう店構えだ。とりあえず、覗く。

『うわ、満席だよ!』
とみー
『しかも、御輿を担いでた人達じゃん』
『あぁ、場違い極まりない感じだな、俺たち』
とみー
『お、出てくるよ』
男A
『っあしたー!!』
男B
『また一仕事行ってきまーす。』
店員A
『熱いから気をつけて!』
男A
『この暑さ、やばいっすよ』
店員A
『しっかりね!』

真っ黒に日焼けした坊主頭で、肩には墨の入った男集が数名出てきた。腹ごしらえを済ませ、もう一度祭りに戻る様子だ。ここで勇気を振り絞り、原住民のフリをして声をかける。どこからどう見ても観光客の格好なのにだ。

『あ、満席っすかぁ?』

多分、この手の人と、はじめての会話だった。冷や汗、あぶら汗、全部大量放出って感じだが、すでに汗はかきまくってるので問題ない。俺は精一杯やった。すると…。

男A
『あ、うちらはもう出る所なんです!』
男B
『すぐ入れますよ、大丈夫です!』
男A
『女将さん、お客さんです!』
男B
『さ、どうぞ!』

しらす定食

なんでか、やたらと腰が低く丁寧な口調の男集。勧められるままに、店内へと導かれる。

俺&とみー
『こんにちわー。』
女将(店員A)
『いらっしゃぁーい。』

一応漁師町ということで、美味しそうな魚系メニューがずらり。優柔不断な俺ととみーは悩む。

『鯵が…』
とみー
『う~ん…。俺決めたよ~。しらす定食!』
『俺も、やっぱり生しらすかな?』

その間10秒ほどだったと思うが、待ちかねたらしき親父(店主)が一言。

親父
『しらす定食2つでいいのね!?』

やばい、この親父せっかちだ。それも相当のせっかちだ。もはや悩む間もない。

俺&とみー
『はい!』
『生しらす定食2個でお願いします!』

二人とも、精一杯やった。さっきの若い男集に『貫禄』を足した親父を相手に、これ以上答えられなかった。すでにスタンバイしてあったのか、注文から1分も待たずに生しらす定食とご対面!

俺&とみー
『ゴクッ』
女将
『さぁ、召し上がれ』

まだわずかに動きを見せるしらすに醤油でとどめを刺し、おろし生姜を混ぜてご飯に乗せる。そして一口。

俺&とみー
『やべぇ』
俺&とみー
『やべぇ』
俺&とみー
(繰り返し…)
『口の中が、相模湾やぁー(彦摩呂風)』
とみー
『ん。もぐもぐ…』

大小様々なしらす達が口の中でプチプチと弾け、これ魚?というようなクリーミーな舌触りを演出する。生臭さはまったく無い。苦味もほとんど感じない。とにかく甘い。そして、磯の香りが広がる。定食なので、あら汁としらすのかき揚げ、自家製の塩辛がついていたが、どれも美味い。

とみー
『う~ん♪あら汁おいしいわ~』
『臭みが無いし、油が良い感じでまいうー』

ふたりで定食をがっついていると、親父が声をかけてくれた。

親父
『最近はこの辺でも、輸入物のしらすを出してる店が多いんですよ』
『残念だけど、水揚げも減ってるし、輸入のほうが安いしね』
『でも冷凍されてるから、生って言ってもぜんぜん違うんだよ』
『うちのやつは朝取ったやつだから、1匹ずつ箸でつまめるでしょ?』
『でも他のやつはそうは行かない、つぶれてるからね』
『この味が本当のしらすの味だから、しっかり覚えといてよ』
俺&とみー
『ほんとに美味しいです!』
『ここまで来た甲斐がありました』
親父
『そうか、良かった良かった』
『しっかり食べてくれ』

あっという間に食べ終えてしまった。もう少し味わえばよかったと、一瞬考えたが止めた。もっと食べたい、次が食べたいと思うあまりガツガツ食べてしまったのだから、自然な表現だった。先に食べて帰った常連らしき客を見習い、食べ終えた俺たちもすぐに立ち去ることにした。親父と女将に、『また来ます』と言い残して。

始まりから終わりまで、『適当』に始まり『適当』に終わった今回の旅。終わり良ければ全て良し。満足感と、日焼けの痛みだけが残った一日だった。


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